01研究概要
イメージング技術を用いて、細胞や組織の機能と構造の関係性を解明し、疾患や生理機能の理解を深めることを目指しています。特に、近赤外蛍光タンパク質(iRFP)や組織透明化技術を活用した非侵襲的かつ詳細な解析を通じて、動脈硬化、寒冷誘導性脂肪組織の適応、神経密度の調節など、多岐にわたる研究を展開しています。
- 動脈硬化の非侵襲的観察
iRFP を発現するトランスジェニックマウスを用いた動脈硬化病変の定量的かつ非侵襲的なモニタリングシステムを開発。この技術は、動脈硬化の進行や治療効果の評価において革新的なツールとなります。(1-3) - 脂肪組織における神経密度の調節メカニズムの解明
マクロファージ特異的にMAFB を欠損させたマウスを用いた研究により、寒冷条件下での褐色脂肪組織(BAT)の交感神経密度および熱産生機能の低下を明らかにしました。組織透明化技術を用いてBAT 内の交感神経を高解像度で可視化し、MAFB がIL-6 の発現を抑制することで神経成長因子(NGF)の発現を維持していることを解明しました。(4) - 治療介入の効果解析
納豆摂取が動脈硬化に与える影響を解析し、腸内環境の変化と炎症性サイトカインの抑制を介したプラーク進行抑制メカニズムを解明しました。(5)
参考文献
- Hamada M, et al. MafB promotes atherosclerosis by inhibiting foam-cell apoptosis. Nature Communications. 2014;5:3147. DOI: 10.1038/ncomms4147
- Tran MTN, et al. In Vivo Image Analysis Using iRFP Transgenic Mice. Experimental Animals. 2014;63(3):311-319. DOI: 10.1538/expanim.63.311
- Kulathunga K, et al. A Novel iRFP-Incorporated In Vivo Murine Atherosclerosis Imaging System. Scientific Reports. 2018;8:14515. DOI: 10.1038/s41598-018-32456-5
- Yadav MK, et al. MAFB in Macrophages Regulates Cold-Induced Neuronal Density in Brown Adipose Tissue. Cell Reports. 2024;43(4):112345. DOI: 10.1016/j.celrep.2024.112345
- Kawamata T, et al. Natto Consumption Suppresses Atherosclerotic Plaque Progression in LDL Receptor-Deficient Mice Transplanted with iRFP-Expressing Hematopoietic Cells. Scientific Reports. 2023;13:22469. DOI: 10.1038/s41598-023-48562-y
02今後の展望
開発した動脈硬化イメージングモデルを基盤とし、様々なストレス、食事、薬剤などが動脈硬化に及ぼす影響を詳細に解析することで、動脈硬化の動態解明を目指します。さらに、このモデルをNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)などの肝臓疾患における白血球浸潤の観察に応用し、病態の理解を深めていきます。
また、多様なストレス条件下での交感神経とマクロファージの相互作用を詳細に探求することで、新たな知見の獲得を目指します。
加えて、褐色脂肪組織に限らず、他の臓器や疾患に対しても組織透明化技術と高解像度イメージングを応用し、研究の幅を広げていく予定です。これらの研究を通じて、疾患のメカニズム解明と新たな治療法の開発に貢献することを目指します。
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図1. 近赤外蛍光タンパク質(iRFP)と組織透明化技術を用いたイメージング
- (A) 野生型マウスと近赤外蛍光タンパク質(iRFP)を発現するトランスジェニック(TG)マウスの比較。iRFP TGマウスでは胸部大動脈の位置に動脈硬化の指標であるiRFPシグナルが検出される。
- (B) 高コレステロール食を与えたマウスにおける動脈硬化の9週間の経時的変化。納豆を摂取させた群ではiRFPシグナルが抑制され、納豆の抗動脈硬化作用が示唆される。
- (C) 褐色脂肪組織における交感神経の染色像。転写因子Mafbを欠損させたマウスでは交感神経密度が減少しており、Mafbが交感神経密度の維持に必要であることが示唆される。
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- 濱田 理人 准教授